結果平等の詳しい解説
けっかびょうどう
意味
結果平等とは、社会構成員間の経済的格差や生活水準の差を最小化し、最終的な成果や所得分配において均等さを追求する理念である。機会平等がスタートラインの公平さを重視するのに対し、結果平等はゴールでの配分の公平性を重視する。これは社会正義や福祉国家の基盤となる概念であり、再分配政策を通じて貧困の解消や社会的包摂を目指す。しかし、過度な平等追求がインセンティブを損ない効率性を低下させるリスクも指摘され、現代の政治・経済議論において機会の公平性とどう調和させるかが重要な課題となっている。
主な特徴と構成
結果平等の核心は、市場メカニズムによる自然な格差形成を是正し、国家による積極的な介入を通じて資源や富の再分配を実現することにある。主な手段として累進課税、社会保障制度の充実、公共サービスの無償化や低価格提供などが挙げられる。このアプローチは、個人が生まれ持った環境や能力の違いによって生じる不利益を補填し、誰もが一定水準以上の生活と尊厳を保てる社会構造を構築することを目的とする。また、格差是正だけでなく、社会的結束の強化や貧困連鎖の断絶を図ることで、長期的な社会の安定と持続可能性を確保しようとする特徴を持つ。
具体的な事例と影響
北欧諸国の福祉国家モデルは結果平等を体現する代表的な事例であり、高い税率と充実した社会保障により所得格差係数であるジニ係数が低い状態を維持している。スウェーデンやノルウェーでは、教育や医療の質の高い公共サービスが広く提供され、経済的格差が機会格差に結びつきにくい社会構造が整っている。一方、中国共産党憲章には「結果平等」の文言が含まれていたが、改革開放後に市場経済導入により修正され、現在は「共通繁栄」を目指す姿勢を示している。これらの事例は、平等追求と経済成長のバランスが各国の政治選択によって異なることを示している。
概要と定義
「結果平等」とは、社会を構成する人々の間で、経済的な格差や生活水準の差をできる限り小さくし、最終的に得られる成果や所得の分配において均等さを目指す考え方です。これは、単に物事を始める際の公平さ(機会平等)を重視するのではなく、物事が終わった後の結果、つまり最終的な分配における公平さを重視する理念と言えます。社会正義の実現や、国民全体を支える福祉国家のあり方を考える上で、非常に重要な概念とされています。具体的には、税金の使い方や社会保障制度などを通じて、所得の再分配を行い、貧困をなくし、誰もが社会の一員として包摂されることを目指します。しかし、一方で、平等さを過度に追求しすぎると、人々が努力する意欲(インセンティブ)を失わせてしまい、社会全体の経済的な効率性を低下させてしまうのではないか、という懸念も指摘されています。そのため、現代の政治や経済に関する議論では、機会の公平性をどのように確保するかと、結果の平等をどのように実現するか、この二つのバランスをどのように取るかが、重要な課題となっています。
機会平等が、スタートラインに立つ際の公平性、つまり誰もが同じ条件で競争を開始できることを重視するのに対し、結果平等は、ゴールテープを切った後に、その成果がどのように分配されるべきか、という点に焦点を当てます。これは、生まれ持った環境や能力の違いによって生じる不利益を、社会全体で調整し、最終的な生活水準や経済的状況において、ある程度の均等性を実現しようとする考え方です。つまり、手続き上の公正さだけでなく、実質的な公正さを追求する理念であると言えます。
歴史と背景
結果平等の思想は、近代思想の黎明期にまで遡ることができます。ジャン=ジャック・ルソーは、その著書『人間不平等起源論』において、私有財産制度が不平等の根源であると論じ、社会契約によって設立されるべき理想社会では、極端な貧富の差は存在しないべきだと示唆しました。これは、生まれながらの不平等や、社会構造によって生み出される不平等を是正しようとする、結果平等の萌芽と見ることができます。
より直接的に結果平等の理念を追求したのは、カール・マルクスとその思想を受け継ぐ社会主義者たちです。マルクスは、資本主義社会における労働者階級の搾取と、それに伴う貧富の極端な格差を批判し、生産手段の共有と、各人の能力に応じた労働と、各人にその必要に応じた分配を原則とする共産主義社会こそが、真の平等を実現すると説きました。この「能力に応じた労働、必要に応じた分配」という原則は、結果の平等を極限まで追求する思想として、後世に大きな影響を与えました。
20世紀に入ると、世界恐慌や二度の世界大戦を経て、多くの国で福祉国家の理念が台頭しました。特に第二次世界大戦後、多くの西側民主主義国家では、市場経済の自由放任主義が行き過ぎた結果生じた貧困や社会不安への反省から、国家が積極的に国民の福祉を保障する「福利厚生国家」が形成されていきました。これは、機会の平等だけでなく、教育、医療、社会保障といった公的サービスを充実させることで、人々の生活水準の格差を是正し、最低限の生活を保障しようとするものであり、結果平等の理念を現実の政策に反映させようとする試みでした。
冷戦期には、この結果平等をより強く志向する社会主義陣営と、機会の平等を重視する資本主義陣営との間で、イデオロギー的な対立が激化しました。社会主義国では、計画経済の下で所得格差の是正が図られましたが、しばしば経済効率の低下や個人の自由の制限といった問題も生じました。一方、戦後民主主義国家では、累進課税制度の強化や社会保障制度の拡充など、再分配政策が拡大し、所得格差の是正が進められました。これらの歴史的経緯は、結果平等の理念が、20世紀における政治・経済・社会システムを形成する上で、中心的な論点の一つであったことを示しています。
主要な仕組み・原理
結果平等は、社会における経済的な不平等を是正し、全ての構成員が一定水準以上の生活を送れるようにすることを目指す理念です。この章では、その実現のために用いられる主要な仕組みと原理について掘り下げていきます。
結果平等を達成するための最も直接的な手段の一つが、高額累進課税制度です。これは、所得が高いほど税率が高くなる仕組みであり、高所得者からより多くの税金を徴収し、それを財源として社会全体に還元することを目指します。例えば、所得税率が所得額に応じて段階的に上昇する累進課税は、所得の再分配を促進する上で重要な役割を果たします。これにより、極端な所得格差の拡大を防ぎ、社会全体の所得水準の平準化に寄与します。
次に、社会保険制度が挙げられます。これは、病気、失業、高齢、障害といった生活上のリスクに対して、加入者からの保険料と公的資金によって、必要な給付やサービスを提供する仕組みです。健康保険、年金保険、雇用保険などは、万が一の事態が発生した際に、個人や家族が経済的に困窮することを防ぎ、生活の安定を保障するセーフティネットとなります。これにより、個人が抱えるリスクによる格差の発生を抑制し、社会全体の安定に貢献します。
さらに、公共サービスの充実も結果平等を支える重要な要素です。教育、医療、福祉、インフラ整備といった公共サービスが、所得水準にかかわらず、質の高いものが広く提供されることで、人々の生活の質が底上げされます。例えば、無償または低額で提供される高等教育は、経済的な背景に関わらず、誰もが能力を伸ばす機会を得られるようにし、将来的な所得格差の固定化を防ぎます。また、質の高い医療へのアクセスは、健康格差を縮小し、国民全体の健康寿命の延伸に寄与します。
これらの政策手段は、市場経済が必然的に生み出す格差に対して、政府が積極的に介入し、是正するという考え方に基づいています。その理論的根拠としては、功利主義や平等主義といった哲学的な思想が挙げられます。功利主義は、最大多数の最大幸福を目指す考え方であり、社会全体の幸福度を高めるためには、貧困層の生活水準を向上させることが効果的であると見なされることがあります。一方、平等主義は、人々の間の不平等を本質的に不正であると捉え、可能な限り格差を縮小すべきであるという立場を取ります。これらの思想は、結果平等の理念を支える倫理的・哲学的な基盤を提供しています。
これらの仕組みと原理を通じて、結果平等の理念は、単に所得を分配するだけでなく、社会構成員全体の生活水準の底上げを図り、より公正で包摂的な社会の実現を目指しているのです。
構成要素・基本構造
結果平等の理念を具現化するためには、多岐にわたる制度的枠組みが有機的に連携する必要があります。その中心的な構成要素として、まず租税制度が挙げられます。累進課税制度は、所得や資産が多いほど高い税率を課すことで、富の集中を抑制し、その税収を社会全体の福祉向上に充てるための財源となります。これにより、高所得者から低所得者への富の移転を促し、所得格差の是正に貢献します。
次に、社会保障制度は、結果平等の実現に不可欠なセーフティネットとして機能します。失業手当、年金、生活保護などの給付は、予期せぬ事態や経済的困難に直面した人々を経済的に支援し、最低限の生活水準を保障します。これにより、個人の能力や努力だけでは埋めがたい経済的格差を緩和し、社会からの孤立を防ぎます。
さらに、教育機会の均等は、結果平等の基盤を築く上で極めて重要です。すべての子どもが、家庭の経済状況や居住地域に関わらず、質の高い教育を受けられる機会を保障することで、将来の所得格差の固定化を防ぎます。公教育の充実や奨学金制度の拡充は、個人の能力開発を促進し、より公平なスタートラインを提供すると同時に、結果としての格差を縮小する効果も期待されます。
医療アクセスの均等化も、結果平等の重要な側面です。健康状態は個人の労働能力や生活の質に直結するため、誰もが経済的な理由で適切な医療を受けられないという状況は、深刻な格差を生み出します。国民皆保険制度や公的医療サービスの提供は、こうした健康格差を是正し、すべての人々が健康で文化的な最低限度の生活を送るための基盤を支えます。
これらの要素は、単独で機能するのではなく、相互に連動し、結果平等の構造を形成します。例えば、累進課税によって得られた税収が、質の高い公教育や医療サービスの提供、そして充実した社会保障制度の財源となる、といった具合です。この連鎖的な仕組みは、個々人が生まれ持った環境や能力の差によって生じる不利を補正し、最終的な生活状態や経済的成果における均等性を図ることを目指します。すなわち、個人の努力や能力が報われる機会を保障しつつも、その結果があまりにも大きな格差を生み出さないよう、社会全体で調整を図る構造と言えます。
主要な種類・分類
結果平等という理念は、その実現の度合いや対象によって、いくつかの異なるアプローチに分類することができます。まず、最も厳格な形態として「絶対的結果平等」が挙げられます。これは、社会構成員全員の所得や資産を完全に均等に分配することを目指す考え方であり、文字通り「結果」を全く同じにすることを追求します。しかし、現実社会においてこれを実現することは極めて困難であり、また、個人の努力や能力に対するインセンティブを著しく損なうため、多くの社会では採用されていません。
これに対し、「相対的結果平等」は、完全な均等を目指すのではなく、社会における経済的格差を一定の範囲内に収めることを目指すアプローチです。例えば、所得格差を示すジニ係数などの指標を用いて、格差が一定水準を超えないように政策的に介入します。これは、完全な均等主義のリスクを回避しつつ、過度な格差がもたらす社会的不安や機会の不平等を抑制しようとする現実的な考え方と言えます。福祉国家モデルの多くは、この相対的結果平等を志向していると考えられます。
さらに、結果平等を捉える視点には、経済的な側面に焦点を当てるものと、より広範な福祉指標を含むものとがあります。経済的結果に限定する場合、主に所得や資産の分配の均等性が議論の中心となります。しかし、現代の議論では、健康状態、教育水準、生活の質、さらには幸福度といった、より多面的な福祉指標を平等に実現することを目指す「包括的な平等観」も重視されるようになっています。例えば、質の高い医療や教育へのアクセスが保証されることは、経済的な所得が多少異なっても、生活の質における格差を小さくすることに繋がります。このように、結果平等という概念は、その目指す「平等」の対象をどのように定義するかによって、多様な様相を呈しているのです。
具体的な事例・応用
第6章 具体的な事例・応用
結果平等の理念は、現実の社会において様々な形で応用され、その効果と課題が検証されています。本章では、その代表的な事例として、北欧諸国の高福祉高負担モデル、日本の生活保護制度、そしてユニバーサルサービスを取り上げ、それぞれの制度がどのように結果平等を追求し、社会統合に貢献してきたか、あるいはその限界に直面しているかを具体的に解説します。
北欧諸国、特にスウェーデン、デンマーク、ノルウェーといった国々は、結果平等を志向する福祉国家モデルの典型として知られています。これらの国々では、所得税率が比較的高く設定されている一方で、教育、医療、育児支援、失業給付といった社会保障サービスが手厚く提供されています。この「高福祉高負担」のシステムは、所得の再分配を強力に推進し、所得格差を示すジニ係数を低く抑えることに成功しています。例えば、質の高い公教育は、家庭の経済状況に関わらず、誰もが同等の教育機会を得られるようにすることで、結果的な能力や所得の格差が世代間で固定化されることを防いでいます。また、手厚い失業保険や職業訓練プログラムは、失業による貧困化を緩和し、社会からの孤立を防ぐ役割を果たしています。これらの施策は、貧困率の抑制や社会的包摂の促進に大きく貢献していると評価されています。
日本における生活保護制度も、結果平等を追求する重要な社会セーフティネットの一つです。生活保護は、経済的に困窮する人々に対して、最低限度の生活を保障することを目的としており、憲法が保障する健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を実現するための制度と言えます。この制度は、失業、病気、障害など、様々な理由で収入が途絶えた人々が、社会から排除されることなく、一定水準の生活を維持できるように支援します。これにより、極度の貧困の発生を防ぎ、社会全体の安定に寄与しています。しかし、生活保護制度の利用率の低さや、制度に対するスティグマ(負の烙印)といった課題も指摘されており、結果平等の理念をどこまで、どのように実現していくかについては、継続的な議論が必要です。
ユニバーサルサービスは、特定のサービス(例えば、電気、ガス、水道、郵便、通信など)を、地理的な条件や所得水準にかかわらず、全国民に一定の品質で提供することを保証する考え方です。これは、生活に不可欠なサービスへのアクセスを平等にすることで、結果的な生活水準の格差を是正しようとする試みと言えます。例えば、過疎地域であっても、都市部と同等の通信サービスが利用できるような制度設計は、情報格差の是正や地域間の生活水準の均てん化に貢献します。これらのユニバーサルサービスは、経済活動の基盤を支え、国民生活の安定に不可欠な要素であり、結果平等の理念を社会インフラの側面から具現化するものです。
これらの事例は、結果平等の理念が、社会の安定、貧困の抑制、そして社会的包摂の促進に貢献しうることを示しています。しかし同時に、高福祉高負担モデルにおける経済成長との両立の難しさ、生活保護制度における利用促進やスティグマの解消、ユニバーサルサービスにおけるコスト負担の公平性など、各制度が直面する課題も存在します。結果平等の実現には、社会全体の公平性を追求する理念と、個人のインセンティブや経済効率性とのバランスをいかに取るかという、常に難しい問いに向き合い続けることが求められます。
メリットと課題
結果平等の理念は、社会全体の安定化に寄与する側面を持っています。経済的な格差が極端に拡大すると、社会的な不満や対立が増大し、治安の悪化や政治的不安定を招く可能性があります。結果平等を追求することで、こうした格差を緩和し、社会構成員間の連帯感を醸成することは、社会の安定化に不可欠な要素と言えます。また、貧困層への所得移転や生活支援は、直接的に貧困を削減し、生活困窮者の尊厳を守ることに繋がります。さらに、教育や医療へのアクセスを平等にすることで、個人の能力が経済状況によって阻害されることなく、最大限に発揮される機会を創出します。これにより、潜在的な人的資本が有効活用され、結果として社会全体の生産性向上や経済成長に貢献する可能性も指摘されています。
しかしながら、結果平等の追求にはいくつかの重要な課題も存在します。第一に、過度な所得再分配は、人々の勤労意欲や投資意欲といったインセンティブを低下させる可能性があります。努力してもその成果が大きく再分配されてしまうのであれば、より一層の努力をしようとする動機が失われ、経済全体の活力が削がれる恐れがあります。第二に、手厚い社会保障制度や公共サービスの提供は、国家の財政に大きな負担をもたらします。これを維持するためには、高い税率が課される必要があり、それが経済活動を抑制する要因となることも考えられます。第三に、結果平等を徹底しようとするあまり、個人の自由や多様性を尊重する姿勢が失われるという批判もあります。これは「ナポレオン的平等」とも呼ばれ、画一的な状態を強制することへの懸念を示唆しています。これらのメリットと課題は、効率性と公平性という、しばしば相反する価値観の間で、どのようにバランスを取るかという現代社会における核心的な議論に繋がっています。結果平等の理念を社会に実装していく上では、これらのトレードオフを慎重に検討し、社会全体の厚生を最大化するような政策設計が求められます。
関連概念・周辺知識
結果平等の理念をより深く理解するためには、いくつかの関連概念や理論的背景との比較検討が不可欠です。本章では、結果平等の議論が展開される際にしばしば参照される「機会の平等」、「格差是正」、「社会的公正」、「フリーライダー問題」、そして「リベラリズム」と「コミュニタリアニズム」といった概念を解説し、結果平等の位置づけを明確にします。
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機会の平等との対比
結果平等と対照的な概念として、まず「機会の平等」が挙げられます。機会の平等は、すべての人々が、出自や属性にかかわらず、教育、雇用、社会参加などの機会に公平にアクセスできる状態を目指します。これは、スタートラインを揃えることに重点を置く考え方であり、その後の個人の努力や能力に応じた結果の違いは容認される傾向にあります。一方、結果平等は、スタートラインの公平性だけでは十分な社会的公正が実現されないと考え、最終的な所得や生活水準における格差を縮小しようとします。この二つの平等の理念は、しばしばトレードオフの関係にあり、どちらをより重視するかによって、社会政策の方向性が大きく変わってきます。 -
格差是正と社会的公正
結果平等の追求は、しばしば「格差是正」という言葉と結びつけられます。社会における過度な経済的格差は、教育や医療へのアクセスにおける不平等を再生産し、貧困の連鎖を生み出す可能性があります。結果平等は、このような格差を国家による再分配政策(累進課税、社会保障、公共サービスの提供など)を通じて積極的に是正することで、より広範な「社会的公正」を実現しようとします。社会的公正とは、単に機会が平等であるだけでなく、社会の構成員が尊厳を持って生活できるような、より公平な資源配分と福祉の実現を意味します。 -
フリーライダー問題
結果平等を重視する政策に対しては、「フリーライダー問題」という批判がしばしば提起されます。これは、社会保障や公共サービスが手厚く提供されることで、個人が自らの努力を怠り、他者の負担に依存するようになるという懸念です。結果平等が、個人のインセンティブを損ない、社会全体の生産性や効率性を低下させるのではないかという批判は、このフリーライダー問題に根差しています。この問題への対応として、給付と負担のバランスを考慮した制度設計や、自己責任を促すような施策の導入などが議論されます。 -
リベラリズムとコミュニタリアニズムの視点
結果平等の議論は、政治哲学における「リベラリズム」と「コミュニタリアニズム」の対立とも関連が深いです。リベラリズム、特にその平等主義的な潮流は、個人の自由と権利を重視しつつも、社会的な不平等を是正するための国家の役割を肯定する傾向があります。一方、コミュニタリアニズムは、共同体の価値や連帯を重視し、個人の権利や自由よりも共同体の維持・発展を優先する場合があります。結果平等は、リベラリズムの文脈で、個人の機会均等を超えた生活保障を求める考え方として位置づけられることが多いですが、コミュニタリアニズムの視点からは、共同体の結束や相互扶助の観点からその必要性が論じられることもあります。これらの異なる思想的背景が、結果平等の具体的な政策への反映の仕方に影響を与えています。
これらの関連概念を理解することで、結果平等の理念がなぜ重要視され、同時にどのような課題や批判に直面するのか、その理論的・実践的な文脈をより深く把握することができるでしょう。
最新動向とトレンド
「結果平等」という理念は、社会における経済的格差や生活水準の不均衡を最小限に抑え、最終的な所得分配や社会的な成果において均等性を目指す考え方です。これは、単に機会の公平性(機会平等)を確保するだけでなく、人々の出発点に違いがあったとしても、最終的な到達点における格差を是正しようとするものです。現代社会においては、社会正義の実現や、すべての国民が一定水準以上の生活を送れるようにするための福祉国家の根幹をなす概念として捉えられています。具体的には、累進課税制度の強化、手厚い社会保障制度の整備、教育や医療といった公共サービスの充実などを通じて、貧困の撲滅や社会からの孤立を防ぎ、すべての人々が社会の一員として包摂されることを目指します。
しかしながら、結果平等を過度に追求することは、人々の働く意欲や経済活動へのインセンティブを削ぎ、社会全体の効率性を低下させてしまうのではないかという懸念も常に指摘されてきました。このため、現代の政治経済学における重要な論点の一つは、機会の公平性をどのように維持・向上させつつ、結果の不平等をどの程度まで是正することが望ましいのか、というバランスの問題です。このバランスをどのように取るかが、各国の政策立案や社会システム設計における継続的な課題となっています。
現代社会は、グローバル化の進展や急速な技術革新といった大きな変化に直面しており、これらが新たな形の不平等を創出する可能性が指摘されています。特に、デジタル技術へのアクセスやリテラシーの差が、経済的機会や社会参加の機会に大きな格差を生む「デジタル格差」は、近年ますます注目を集めています。こうした背景から、格差拡大への懸念を背景に「結果平等」への関心が再燃しており、その実現に向けた新たな政策的アプローチが模索されています。
具体的には、近年世界的に議論が活発化しているベーシックインカム(Universal Basic Income: UBI)の導入可能性とその影響について考察が進んでいます。UBIは、すべての人々に無条件で一定額の現金を給付する制度であり、貧困削減や格差是正の有効な手段となりうる一方で、その財源確保や労働意欲への影響など、多くの課題も内包しています。また、デジタル格差への対応策として、教育機会の均等化やインフラ整備といった政策の重要性も論じられています。これらの最新の動向やトレンドを踏まえ、従来の再配分政策をどのように刷新し、変化する社会情勢に対応していくべきかについて、国際的な政策動向や学術的な最新の知見を交えた多角的な検討が求められています。
将来展望とまとめ
人口減少社会やAI(人工知能)の普及といった、現代社会が直面する構造的な変化は、「結果平等」の理念に新たな課題を突きつけています。人口減少は、労働力不足や社会保障制度の持続可能性への懸念を生じさせ、結果平等を支えるための財源確保や社会全体の活力を維持することが一層困難になる可能性があります。また、AIによる自動化が進むことで、特定のスキルを持つ人材とそうでない人材との間に新たな格差が生じ、所得分配の不均衡が拡大する恐れも指摘されています。こうした状況下で、結果平等の理念をいかに維持・発展させていくかは、将来の社会設計における重要な論点となります。
持続可能な社会を構築するためには、「機会の平等」と「結果の平等」という二つの理念のバランスをいかに取るかが極めて重要です。機会の平等は、全ての人が生まれ持った環境や属性に関わらず、教育や就業の機会に公平にアクセスできることを目指します。これにより、個人の能力や努力が正当に評価される社会の基盤が築かれます。一方、結果の平等は、市場メカニズムだけでは生じうる過度な格差を是正し、社会全体の福祉水準を高めることを目指します。この二つは対立する概念ではなく、むしろ相互に補完し合う関係にあると捉えることができます。例えば、質の高い教育機会(機会の平等)を誰もが享受できるようにすることで、個人の潜在能力を最大限に引き出し、結果としてより公平な所得分配(結果の平等)につながる可能性も考えられます。
本記事では、「結果平等」という理念について、その定義、特徴、具体的な事例、そして現代社会における課題と将来展望を概観しました。結果平等は、社会構成員間の経済的格差を最小限に抑え、最終的な所得分配における均等さを追求する理念であり、福祉国家の重要な柱の一つです。累進課税や充実した社会保障制度といった再分配政策を通じて、貧困の解消や社会的包摂を目指す一方で、過度な平等追求が個人のインセンティブを損なうリスクも内包しています。人口減少やAI普及といった社会構造の変化を踏まえ、機会の平等と結果の平等をいかに調和させ、誰もが尊厳を持って暮らせる持続可能な社会を構築していくか。この問いに対する継続的な議論と、現実社会に即した政策的配慮が、今後ますます求められるでしょう。
例文
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この政党は、単なる機会平等だけでなく、税制による再分配を通じて結果平等を実現することを政策の柱としている。
政治・経済政策の文脈で、所得格差是正のための具体的な手段(再分配)と結びつけて使われる例。
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教育現場での支援は、生徒のスタートラインを揃える機会平等だけでなく、卒業後の進路や収入における結果平等にも影響を与える可能性がある。
「機会平等」との対比や関連性を示す文脈で、最終的な社会的成果の均等化というニュアンスで使われる例。
出典
- 結果平等 - コトバンク(広辞苑・デジタル大辞泉等) (コトバンク)
- 平等の種類(機会平等と結果平等)- 厚生労働省 男女共同参画局 (厚生労働省)